複眼:個眼の数は?
12月8日付けの科学雑誌「ネイチャー」に、5億年前(カンブリア紀)に生息していたアノマロカリスの眼の化石が見つかったとの報告(AFPBB)が出ました。この動物はTVの「カンブリア宮殿」にもCGで再現されていますのでご存じかと思いますが、当時の食物連鎖の最上位に位置し、このアノマロカリスに囓られた後がある三葉虫の化石なども多数出土しています。
報告によれば、アノマリカリスの眼は複眼で、その個眼の数はなんと16,000個もあるようです。三葉虫の複眼も、個眼のレンズは方解石からなり、その光学系には3つのタイプがある事で有名ですが、どうも個眼の数は捕食動物ほど多いようです。現存する複眼動物の個眼の数をみると、昆虫や甲殻類の複眼は通常、20個程度から数万個の個眼をもちますが、空中の捕食者であるトンボでは個眼の数は2万数千個です。ちなみに、ハエでは6,000個、ミツバチは女王バチで3,000~4,000個、働きバチで4,000~5,000個、雄バチでは7,000~9,000個の個眼を持っています。他方、身体の小さなアリでは、ある種の働きアリで100~600個程度しか個眼がありません。また土の中や洞窟など暗い環境に棲む昆虫ではわずか数個の個眼しか持たない例もあります。
このように種や生活スタイルにより複眼を構成する個眼の数は異なりますが、中には雌雄により大きく異なるケースもあるようです。あるホタルでは雄は2,500個の個眼をもつのに対し、雌ではたった300個しかもたないのです。この他にも、アブやハエでは複眼の背面と腹面では個眼の大きさが異なり、さらに雄バエは雌バエを追跡して交尾しますが、雄バエの複眼前部は雌バエと比較すると両眼の視野が重なる部分が多く、雌を追跡するのに適応しているなど独特の機構をもっています。
さらに、特殊例として、ミズスマシなどでは空中と水中を同時に見るために複眼が上下に2分され、カゲロウや南極の海底に住む等脚目などでは背部と腹部に別々の4つの複眼を持っています。また、複眼を構成する個眼は複眼内で場所により、たとえば偏光の検知などで、その構造や特性が異なる、など複眼といっても単純に議論ができない複雑な構造になっています。
このように節足動物は複眼という、我々脊椎動物のカメラ眼とは異なる眼の進化をしてきました。また捕食を行う場合の、被捕食動物との距離の取り方などにも独特のシステムをもっています。小さい脳で素早く情報を処理する事が生き残る上で大変重要であったのでしょう。ちなみに我々のカメラ眼では、レンズにより網膜上の像は”上下・左右反転”しており、脳の中でイメージを反転再構成しないと外部のイメージができあがりませんが、複眼ではこのような反転処理は必要ありません。また脳はエネルギーを大量に使う浪費家です。特に必要なければこのような浪費は避ける方が生き残り易かったと言えるでしょう。
ところで最初に複眼をもったのはどのような動物だったのでしょうか?小さいピンホール眼が複数集まり、このピンホール眼にレンズができて複眼ができたように思われますがどんなものでしょうか?なお遺伝子の分析からは、複眼であれカメラ眼であれ、眼を作る遺伝子は共通しており、祖先動物は一緒だったとの事です。
ここまで書いてきて、改めてイカやタコの軟体動物には感心致します。彼らがカメラ眼を発達させた”動機”は何だったのでしょうか?以前、ある説を紹介しましたが、まだまだ謎はたくさんあります。
報告によれば、アノマリカリスの眼は複眼で、その個眼の数はなんと16,000個もあるようです。三葉虫の複眼も、個眼のレンズは方解石からなり、その光学系には3つのタイプがある事で有名ですが、どうも個眼の数は捕食動物ほど多いようです。現存する複眼動物の個眼の数をみると、昆虫や甲殻類の複眼は通常、20個程度から数万個の個眼をもちますが、空中の捕食者であるトンボでは個眼の数は2万数千個です。ちなみに、ハエでは6,000個、ミツバチは女王バチで3,000~4,000個、働きバチで4,000~5,000個、雄バチでは7,000~9,000個の個眼を持っています。他方、身体の小さなアリでは、ある種の働きアリで100~600個程度しか個眼がありません。また土の中や洞窟など暗い環境に棲む昆虫ではわずか数個の個眼しか持たない例もあります。
このように種や生活スタイルにより複眼を構成する個眼の数は異なりますが、中には雌雄により大きく異なるケースもあるようです。あるホタルでは雄は2,500個の個眼をもつのに対し、雌ではたった300個しかもたないのです。この他にも、アブやハエでは複眼の背面と腹面では個眼の大きさが異なり、さらに雄バエは雌バエを追跡して交尾しますが、雄バエの複眼前部は雌バエと比較すると両眼の視野が重なる部分が多く、雌を追跡するのに適応しているなど独特の機構をもっています。
さらに、特殊例として、ミズスマシなどでは空中と水中を同時に見るために複眼が上下に2分され、カゲロウや南極の海底に住む等脚目などでは背部と腹部に別々の4つの複眼を持っています。また、複眼を構成する個眼は複眼内で場所により、たとえば偏光の検知などで、その構造や特性が異なる、など複眼といっても単純に議論ができない複雑な構造になっています。
このように節足動物は複眼という、我々脊椎動物のカメラ眼とは異なる眼の進化をしてきました。また捕食を行う場合の、被捕食動物との距離の取り方などにも独特のシステムをもっています。小さい脳で素早く情報を処理する事が生き残る上で大変重要であったのでしょう。ちなみに我々のカメラ眼では、レンズにより網膜上の像は”上下・左右反転”しており、脳の中でイメージを反転再構成しないと外部のイメージができあがりませんが、複眼ではこのような反転処理は必要ありません。また脳はエネルギーを大量に使う浪費家です。特に必要なければこのような浪費は避ける方が生き残り易かったと言えるでしょう。
ところで最初に複眼をもったのはどのような動物だったのでしょうか?小さいピンホール眼が複数集まり、このピンホール眼にレンズができて複眼ができたように思われますがどんなものでしょうか?なお遺伝子の分析からは、複眼であれカメラ眼であれ、眼を作る遺伝子は共通しており、祖先動物は一緒だったとの事です。
ここまで書いてきて、改めてイカやタコの軟体動物には感心致します。彼らがカメラ眼を発達させた”動機”は何だったのでしょうか?以前、ある説を紹介しましたが、まだまだ謎はたくさんあります。
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